小学校5、6年生からの正規英語教育の行方は?
2018年もいよいよ春を迎えようとしていますね。春は様々な変化が生じ、新しいことが始まる季節ですね。当教室も新年度への移り変わりの時期へと進んでいます。
今回は春ということもありますが、「変化」というテーマに着目して変わろうとしている小学、中学、高校における英語教育について再度考えてみようと思います。
いよいよ今春から小学校5,6年生への正規授業としての英語教育が始まるようですね。無論、全国の小学校一斉に、かつ同じ体制で実施するということではないでしょうが、都内23区ではいくつかの学校で既に週数回定期的に英語の授業を実施することを決定しているようです。またそれ以前に小学生以下を対象とする英語教育は民間の英会話スクールのようなサービスを提供する側と子供たちの家庭といったサービスを受ける側の需給が一致し、加熱の一途をたどっているように感じます。こうした英語の早期教育の現状は、果たして本当に子供たちの語学力向上に繋がるのでしょうか。この疑問に対する当方の答えは、It depends.です。
現在当教室では中学2年生の生徒数が増加しつつあります。その子たちの多くは小学生から、最も早期に英語を始めた生徒さんは3歳から英語を民間のスクール又は私立の幼稚舎から英語学習を始めています。ここで当方と同様に恐らく皆さんが持たれるかもしれないのは、「なぜそんなに早く英語を習い始めているのに中学になって当教室でまた英語を習う必要があるの。」という疑問ではないでしょうか。
現状を率直に申し上げると、中学以前に様々な形態で実施されている英語学習と中学になって施される英語教育に大きな差があり、中学生になった途端に英語がわからなくなる子供が多くなるということです。無論、早期に英語学習を始めた子供の何割かは、中学に入学して順調に語学力伸ばしていくというケースもあるかとは思いますが。ここで問題なのは、かなりのこうした子供たちが英語をほぼ丸暗記の状態で「この英語は、こういう日本語の意味なる。」ということを覚え、かつまた単語主体で記憶しているためどういうルールに基づいてその表現が構成・配列されているかという重要な点が身についていないということです。また発音に関しても、子供の幼い聴覚で記憶しているため変に偏ったものになってしまうことが多く、更に悪いことには発音の似た単語の区別が出来ておらず、それが間違った意味で記憶されているケースが多く見受けられます。
更にこれまで主に公立小学校で行われてきた月数回かの外国人講師による英語の授業に関しても、当方の見解では「ほとんど中学校とのリンクがなく言葉としての運用の観点から利点を見出せない」というのが本当のところです。絵を見て単語を覚えたり、あいさつや自己紹介程度の英語を丸暗記したり、英語の歌を歌ったりすることに何年も費やすことで本当に子供たちが将来必要とする語学力にプラスの効果をもたらすのでしょうか。子供たちに実際,小学校の頃の英語の授業を覚えているかどうか聞いても答えはいつもNOであり、断片的にしかその記憶がないのが現状です。
こうした事実を察知してか又は教育改革の先取りのためなのか、ここ数年民間の学習塾が「読む」「聞く」「話す」「書く」英語力の習得を看板に掲げ英語の特別コースを開講し始めていますね。これはある意味義務教育で行われる英語教育の補完する効果はあるのかもしれません。但しこの場合も誰がそれをやっていくかというこが極めて重要であることを忘れてはならないと考えます。子供は新しいことを学ぶ時、教えられたことをそのまま素直に視覚と聴覚を使って記憶していきます。教える側がその事実を軽んじたらその責任は極めて重いと考えなければならないでしょう。
以上のことを鑑み、当教室でも小学校と中学校、更にそれ以降の英語教育をうまくリンクさせていくために、小学校5、6年生を対象とした英会話ではない「英語コ-ス」を立ち上げる計画をしています。これまで当教室は「小学生以下は英語より、まず我々の母語である日本語をしっかりと身につける」という方針の下に小学生以下対象のコースは実施してきませんでした。しかし現状に対する不安と子供たちの将来を真剣に考えた結果、コ-スの開始を検討せざるを得ないという結論に達しました。長期的観点から本当に意味のある正確でかつ思考力に訴える当教室独自の教授方法で、単なる暗記に留まることのないコースの実現に向けてスタートします。
まだまだお伝えしたいことがありますが、今回は現状に対する所見と今後の展望についてお伝えしました。次回は再度小学校での英語学習の意味を考え、中学校以降の英語教育との連関に関し更に洞察を深めてみたいと考えております。